それはとても小さな
>08:放送
掃除の時間。今日はを含め女子数名は特別教室は移動教室など、普段あまり使われない教室の掃除をしていた。
とお妙がほうきでサカサカとゴミを掃いている傍ら、阿音と百音はテーブルを拭き、神楽は乾拭きで機材を拭いている。
ふだんあれだけ色々とはっちゃけて問題行動を起こすと言われている3Zの生徒だが、こういった時は意外と真面目だ。
授業も普通に受けている事が殆どだが、たまに大暴れすることもあるが日常茶飯事と言えばそうだろう。
「それで、隣のクラスの子だったんだけどね、百音ったらフったのよ。お金持っていそうだったのに、もったいない」
「私は別にそう言うの興味ないからいいじゃないですか。だいたいお金で相手を判断している姉さんもどうかと思いますけど」
「甘いわよアンタは。ねえ?」
「え、そこで私に振るの?」
掃除をしながら皆の口も忙しなく動く。
阿音が誰それがお金を持っていそうだと言う話しを切り出せば、お妙は家の道場が、と会話がかみ合っているようで居ない。
しかしなにかを話していれば気が済むのか、互いに気にしてはいないようだ。
そこにゴミ出しに行っていた公子が戻ってくれば、さらに話題は広がり最終的に恋話へと発展する。
どこぞのクラスの誰それが、となれば反論にならば誰がいいかなどと話はどんどんと進んでいく。
その会話に参加しているのは殆ど阿音と公子だけだが、油断しているとたまにこちらまで飛んでくるのだからどうしようもない。
「ところでお妙はどうなのよ」
「何かがしら?」
「あの風紀委員長よ。なんだかんだで何時もアタックされてるじゃない。それとも好みじゃないとか?」
「好みねぇ。贅沢は言わないわ。ただ、ゴリラで無くストーカーでも無く、普通の人が良いの。あと笛を盗んだりしない人かしら」
「それほぼピンポイントの人が攻撃されている好みだね」
口元を引きつらせつつさり気無く言ってもお妙の笑顔は変わらない。
確かに近藤は少々どころではなく、かなりアレな行動が多い。それさえなければいい奴なんだけれどと思うが
それを言っても同じ答えがお妙から返って来ることなど、火を見るより明らかだ。今は黙っていたほうが懸命だろう。
しかし沈黙を選んだへまさかの恋話を振ってきた阿音。何故そこで自分なのだと、驚きと困惑の表情を隠しはしない。
「アンタってなんだかんだで風紀委員の連中とつるんでるじゃない。実は好きな人が中に居るんじゃないの?」
「居ないよ! 断じて居ない! アイツらは本当気兼ねなく付き合える友達なだけだって!」
「その慌てる所がますます怪しいんですけどォ? 案外沖田君とか好きなんじゃ無いの〜?」
阿音の言葉を反論したへ、背後から公子の援護攻撃がやってきた。
どうしてこう無理矢理その方面へ持っていきたがるのか。
そんな事を考える暇があるなら今はこの恋話攻撃を如何にして終わらせるのか。それが先決だ。
そうでなければとんでもない方向へと話しが持っていかれる。
「ち、違うよ! だってアイツ、サディスティック星の王子様だよ! 無理無理!」
「じゃあ土方君?」
「アイツただのマヨラーじゃん!」
「じゃあいっそ両方」
「人の話聞いてたァァァァ!? マヨネーズもドSも無理!! マヨネーズになるかマゾになるかじゃん! どっちにしてもMじゃん!」
留まる事を知らない怒涛の如くの二人からの攻撃に、一人応戦するは溜まったものでは無い。
お妙に助けを求めようとしたが、我関せずで掃除をしている。神楽に関しては機材の拭き掃除がまだ終らない。
そうこうしているうちにも阿音と公子はさらに山崎か、それとも桂か新八かと3Z限定だが男子の名前を次々出してくる。
「だからァ! 居ないんだってそう言う人は! アイツらはただの友達!」
「まあ、今はそうでもいつかはってあるだろうしね」
「もしそうなるとしても総悟は絶対無いね。だってアイツには苦汁しか舐めさせられた事無いもの」
これでこいが発展したらそれこそMだ。
しかしは自分がそうでは無いと声高に、それこそ世界の中心で叫んでもいいぐらいの自信があった。
ここぞとばかりに今までたまりに溜まった様々な愚痴を零し始めるは止まらない。
「だいたいいっつもアイツは人の事奴隷扱いしたり、パシリにしたり、弱みを握ったりとか・・・爪きりの時深爪してしまえばいい」
「、」
苦々しげな表情で沖田へ積もり積もった愚痴を吐き出すの袖を引っ張る神楽。
一体何だと振り返ればスイッチが入ってしまっているが切り方がわからないと聞いてきた。
何のスイッチだと思って機材の方を見た瞬間、は表情どころか動きすらも固まり、口元を引きつらせた。
入ってしまっていたスイッチがなんであるか一瞬で判った。
一度か二度、機材を使わせてもらった事があって知ってはいたが、今ほど知らなければ良かったなどと思ったことは無い。
「どうやらこれ、神楽ちゃんが拭いている間に知らず入ってたらしいんだけど・・・・今の会話は殆ど流れてたと思うわよ」
全校に、と笑顔を添えて言われた真実にはこのあと起こるであろう身の危険を考えてしまった。
先ほどの会話となれば土方はいいにしても、総悟への愚痴はこれでもかというほど言っていた。
教室へ戻る前に抹殺されるのが目に見えている。今でもとてつもなくSな笑みを浮かべている沖田の姿が想像できてしまう。
その後、の絶叫とこれでもかという沖田への謝罪の言葉もすべて全校に流れ出てしまったのは言うまでもない。
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