前へ進め、お前にはそのがある

>色取り取り -act05-







八郎の事を聞くも、お登勢の店では情報は一つも手に入らなかった。
父親が死んでから生活費を稼ぐべくして、江戸にでた八郎。渡された写真を片手に、四人で手分けして探しはじめた。
おばちゃんが言うには、真面目な孝行息子らしいが正直それだけで探すのは至難の業だ。
お登勢も言っていたがこの町では、本名を名乗って生きている者は少ない。そればかりか素性さえ誰にも明かさない者だっている。
その所為かまったく聞き込みは掠りもしない。


「銀さーん」

「あ、新八君、神楽ちゃん。どうだった?」

「こっちはダメでした」

「私もダメネ。これ、オバちゃんの匂いが染みつきすぎて定春、鼻おかしくなってしまったアル」


三人とも手がかり一つ無く、残る頼みは銀時だったが先ほど出て来たビルの看板をみれば、どうやら非合法の闇医者の店らしい。
知っている情報屋のどれにもアタリがなかった為にもしかしたら、と考えて訪ねてみればどうやら勘は当たったらしい。
ここだけでは無く、複数の医者を転々として顔を変えていったようで、持っている写真はもう使い物にならないだろう。
顔を変えていると言う事実だけでも、尋常では無いだろう。新八は深く関わらない方が二人のためなのでは無いか考えた。
銀時は、それを判断するのは自分たちでは無く、とにかく今は八郎を見つけなければ話は進まないと判断する。


「でも、写真はもう使えないし。・・・どうやって?」

「整形つったって、骨格まではなかなか変わんねーだろ。、マジック」

「はいどうぞ」

「いや、さん・・・何、平然とマジック出してんですか」


新八のツッコミも最もだが、出かけ際に何故か思わず持ってきてしまったため、本当に偶然だった。
がマジックを持っていた事を銀時が知って言ってきたとは思えないが、結果オーライと言う奴だ。
銀時はとりあえず、骨格はそのままだろうからと、マジックで写真に少しずつ描き足していく。
足していく場所は何故か頭部分だけの為に、整形以前に、それではただのヅラであると新八がツッコムが、今度は神楽が描きこんでいく。
次第に原形を失い始めているが、誰一人として気付かずにどんどん大変な事になっていった。
その結果が、ありえないぐらいモッサリしたアフロヘアーに繋がった眉毛。
鼻毛なのかモミアゲなのかわからない、毛の繋がりも付け足され我にかえった時には既にとり返しのつかない事になっていた。
こんな人間はどこにも居はしないとツッこむ新八だが、銀時はネバーランドあたりになら結構いると、けして折れない。
その隣では大変な事になっている八郎の写真を見ながら、整形じゃなくて毛しか描いていないという新八の言葉に、頷くしかできなかった。


「だいたい借り物の写真なのに、こんなにしちゃってよかったんですか?」

「大丈夫だって。あんなに自慢する孝行息子の写真だ。どうせネガもあるだろうし、引き伸ばして飾ってるかも知れねェじゃん」

「むしろ壁紙にしてるかもしれないネ、あのオバちゃんならやりかねないアル。」

「息子の写真引き延ばして壁紙にしてる親なんて気持ち悪いよ!! やめだ! やめだ! やっぱやめよう! こんな仕事、どうせこんな・・・」


新八の言葉は横を通り過ぎた人のなった携帯の音で途切れた。
いつもならば気にはしない、何の変哲も無い携帯の音。しかしその時ばかりは、何故か気になった。
それもそうだろう。例え視界の中心から外れていようと、思わず目で追ってしまうようなありえないアフロヘアーに、さらに鳴っている携帯もその中。
色々とありえ無い事が起きている。何が一番ありえないのかと言えば、先ほどの八郎の写真。
今は見るも無惨な状態だと言うのに、銀時たちが書き足したそのままの姿がそこにあった。
そればかりか、携帯に出た時の名乗りが「八郎」である。
驚愕の顔を浮かべる銀時達の中で一人、神楽だけはどこか嬉しそうな顔をしていた。


「え、ええええっ! 本当に!? いやいやいや、ありえないってコレ!!」

「マッ・・・マジでかァァ!? いっ、いたぞオイぃぃ!!」

「どどど、どーすればいいの! 何をすればいいの僕達!?」

「おちつけ! とりあえずババア呼んでこい!!」


慌てふためきながらもおばちゃんを呼ぼうとしたが、肝心の本人が様子がおかしい。
ギャルの集団に半ば囲まれた状態に、言葉途中で途切れた。
あまりにも距離がありすぎるために何をしているのか、最初は気付かなかったが神楽はわかったらしい。



「アレ・・・何やってんの? アレ・・・」

「ギャルとメンチ切り合ってるアル」

「バババぁぁぁ!!」



慌てた銀時はおばちゃんは自分でどうにかするからと走り出す。
達はどこへ行ってしまった八郎を追うようにして、銀時とは逆へと向かった。





<<BACK /TOP/ NEXT>>