前へ進め、お前にはそのがある

>色取り取り -act02-







「よし、じゃあ新八とは雪集めて来い。二人でやりゃすぐに集まんだろ」

「はーい」

「銀ちゃん、私は何すればいいアル?」

「オメーは俺と一緒に雪玉固めんだよ」


先日のあの一件の後、お登勢の持ってきた話しに最初は「どうせまた騙すんじゃねぇだろうな」と疑いの眼差しだった。
しかし優勝すれば賞金が出るし、もし優勝が無理でも参加賞ぐらい貰える筈だとが言えば、突然神楽が食って掛かる。
狙うは一位のみ、それ以外は全て眼中に無い。力んで言う神楽に銀時まで同意して、結局は「狙うは優勝だ!」と参加する事になってしまった。
いつもの流れである。


「でも銀さん、よくやる気が起きましたね」

「そりゃ、賞金ガッポリ貰えるっつーんなら、俺は全力出して頑張るからな」

「え・・・いや、誰もガッポリとは・・・」

「よーし、神楽。まずはこう言う形のだなァ・・・」


賞金はもらえるとは言ったが、そこまで誇張して伝えた覚えは無いは、訂正しようか否か迷った。
しかしここでもし、そこまで貰えるわけでも無いと知れば、一気にやる気ゲージはゼロになり早々にコタツの妖精になってしまうだろう。
優勝できるか否かは判らないが、とりあえず家でグータラしてるより外で動いていた方が健康的だと判断し、黙っておくことにした。

新八と二人掛りで雪を集めて戻っていく傍ら、周りを見渡せばこれでもかというほどに、色気を前面に押し出した雪像ばかりだった。
さすがかぶき町だ、と思いながらそんな雪像に囲まれる万事屋の土台まで行けば逆にこざっぱりとしている。
それもそのはずだ。周りは何日も前からコツコツと作ってきた所もあるが、万事屋はまさにぶっつけ本番。
いくら賞金が出るからといっても、この寒い中を雪像作りに勤しむ程やる気があるわけでは無い。


「銀さーん、雪もってきました」

「おう、そこおいとけ」

「いやー、みんなスゴイのつくってますよ、雪像」


新八がしみじみとして言うが、銀時は店の宣伝にもなるからなと答えながら、なにやら顔より大きい雪玉を作っている。
後ろから覗き見たは土台の上にそれと同じ、大きめの雪玉が置かれているのに気付いたが一体何を作ろうとしているのかまったく分からなかった。
そもそも何を作ろうかと言う相談も何も無かったわけであるし、時間もそんなにない。
新八も気になったのか、万事屋は一体何を作るのかと聞こうとした。しかしその言葉は途中で途切れてしまう。


「まァ、こんなトコか。あとは真ん中に棒を立てて・・・」


土台の上に少し間を空けて置かれた二つの雪玉。銀時はその間に棒を立てるつもりらしい。
銀時が言い切る前に、左に置いてあった雪を新八は素早く蹴り飛ばして粉々にしてしまった。
もちろんそれに何をするんだ、と怒る銀時だったが新八も一歩も引かない。
何を作ろうとしているのか、それは聞かずとも今の二つの雪玉と真ん中に立てるといっていた棒の存在で、嫌でも想像できてしまう。
そんな自分に軽く自己嫌悪を抱くだったが、それにさらに追い討ちをかけるかのごとく神楽がどこかで作ってきたであろう、棒を抱えて戻ってきた。


「きゃああああ!! 何もってんの神楽ちゃん!」

「新八よォ、お前何? 何を勘違いしてるかしらないけどよ、これ、アレだよ。ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲だよ」

「アームストロング二回言ったよ! あるわけねーだろ、こんな卑猥な大砲!」


はただ呆然と成り行きを見守っているしかできなかったが、殆ど言いたい事は新八が言ってくれている。
そのまま任せておこうと思っていれば、思春期はすぐにそっちの方へと話題を持っていくだの、暫く話しかけないでだの。
銀時と神楽に散々に言われてしまった。
ごめんね、と思いながらも自分の主張を言葉にするには些か羞恥心が邪魔をする。
しかしやはり、そうであろうと無かろうと見た目があまりにアレなので、なんとかしてそれを阻止したいと思っていた所に長谷川がひょっこりと現れた。
ここは長谷川にも何か言ってもらおうと思ったのはだけでなく、新八も同じ心境だったらしく「二人を止めてください」と言うが
頼みの綱だった長谷川から返ってきた言葉は二人にとって、予想範疇外のものだった。


「なんだよオイ、ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃねーか。完成度高ーなオイ」

「え゛え゛え゛え゛え゛!? なんでしってんの!? あんの? マジであんの? 僕らだけしらないの!?」

「江戸城の天守閣を吹き飛ばし、江戸を開国させちまった戌威族の決戦兵器だ」

「何? こんなカッコ悪い大砲にやられたんですか、僕らの国は!?」

「ある意味、死んでも死にきれませんよ・・・それ・・・悲しすぎる」


まさかの真実なのかどうかは判らないが、それが本当であったのならばどれだけ悔しいか。
思わず口元を引きつらせただったが、銀時は二人の言葉を軽くスルーして、長谷川に何故ここにいるのかと問いかけた。
どうやら長谷川も個人参加でこの祭りに参加しているらしい。もちろん目当てはグランプリの賞金だ。
知り合いが参加していて気になるのは、もちろん作っている作品だ。
いいから見せてみろよと、なんだかんだで言い包め、一旦自分たちの作業を中断して長谷川の作品を見る事になった。

思えばこれが、この後全てが拗れていった原因であったのかもしれない。





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