前へ進め、お前にはそのがある

>変化と不変 -act04-







ここへ来る途中、黄色くて丸いハリボテを抱えてきたと思っていたが、その用途は隠れ身の術だったらしい。
銀時がハリボテを顔にはめて屋根から下りて行ったのを合図に、次々と皆屋根から下りて集まってくる役人を倒していく。
やたらとさっちゃんが納豆臭かった理由もすぐにわかったが、納豆まみれになって気にはならないのかと疑問に思ってしまう。
全員が屋根から下りた所で最後、が役人達の集まるその中心に降り立った時、誰かが叫んだ。


「な、パンダがいるぞ! パンダ!」

「なにィ!? パンダだと・・・グフッ!

「熊猫パンチ、なめたらいけませんよ」


パンダという単語に惹かれ集まった役人。それを容赦なく掌底によって沈めた。
見た目は愛くるしいパンダでも、漢字に変換すれば熊猫。熊の一種である事を忘れてはならない。
が、しかしは一人の人間である。そこも忘れてはならない。

しかし如何せん敵が多すぎる。
次から次へと溢れるようにして現れる役人達に、やがて銀時達は一箇所に集まり隠れる事となってしまったのだが。



「銀ちゃん! もっとつめてヨ、私肩出てるヨ、やられる! 肩もっていかれる!!」



「俺にいたってはまる出しだぞ、やられる! 全部もっていかれる!!」



「出ていけお前ら! これは一人用なんだよ、俺が俺のためにつくったんだぞ!!」



「じゃあこうすれば一人分ですよね!? って、臭っ! さっちゃんさん手をどけて下さい!」



「ギャッ! ちょ、! 腰に抱きつくのはいいけど、絞まってる!! めちゃくちゃ絞まってるからァァ!!



忍び込む事前提だったために事前に作り上げたであろう、壁紙。しかしそれは周りの風景に不釣合いな模様だった。
他に隠れる場所などどこにもなく、一人用であるはずの壁紙の裏に全員で隠れようとするが容量オーバーにも程がある。
気付けば桂一人は完全に体が外にまる出しだ。
は縦になれば一人分だと銀時に抱きついたはいいものの、明らかにそれを退かそうとしているさっちゃんの手が顔面にあたりグイグイと押してくる。
離れてなるものかとも意地になって踏ん張るがその結果、銀時が苦しむ羽目になった。


「ん・・・銀ちゃん! アレ見て」

「!!」


神楽の指し示した場所にエリザベスが役人によってどこかへ連れていかれそうになっている姿があった。



「エリザベス!!」

「ヅラ、待てェ!!」




制止する銀時の言葉など聞かず、桂は助けるべく走り出したがそれが役人に見つかる原因となってしまう。
頭の端ではよく今まで見つからなかったものだと思うが、見つかってしまったものは仕方がないと桂の後を追うようにしてその場から逃げた。
それをまるで共に来てくれるのかと、ヒーロー番組の王道展開的な台詞を吐きながら感動している様子の桂だが銀時の言葉は対して辛辣である。
このままでは全滅だという最悪な状況を覆す為、さっちゃんは忍の道具が入っている袋を取り出した所で思い切りこけて中身をぶちまけてしまった。
しかしそれが功を奏し、敵の足を止めることができたがまきびしが刺さったさっちゃんの姿は痛々しい。


「思い通りだわ。忍法、まきびしサークルよ」

「ウソつけ!! ささってんぞ!」

「大丈夫ですか?」

「これぐらい、どうって事無いわ。それより、敵が動きを止めている今がチャンスよ」


まきびしを敵に投げつけている銀時達を呼び、すぐにその場から離れてエリザベスの姿を追う六人。
遠目に見えたのは屋敷内に連れていかれるエリザベスの姿。
またも桂が暴走しがちだったが、敵に追われる事もなく今までの苦労はなんだったのかと思うぐらい、あっけなくその入り口までたどり着いてしまう。
その事をおかしいと気付いたさっちゃんの言葉に、罠かもしれないと言う新八だったが銀時や桂はまるで臆することなく中へと入ってしまった。
全員が中に入った事を確認したかのようなタイミングで、扉は上から降りてきた格子で塞がれてしまう。



「おいィィィィィィ!! おもっくそ罠じゃないすか! 閉じこめられちゃった!!」

「銀さん、桂さん。くぐってきた修羅場が違うといってましたがこれは一体、どう言う事でしょうかね?」

「バカ、ちげーよ。オートロックなんだよ。しらねーの? お前ら」

「何度も言わせるな。俺たちがそんなバカな策にハマるわけがあるまい」



どう考えても罠だろうと思える状況を、どうあっても認めはしない大人二人の姿に、無言のまま視線を向けたがすでに背を向けられ歩き出していた。
オートロックをウチにもつけようかという銀時だが、突然壁の掛け軸が自動で巻かれ中から現れたのは壁に埋め込まれたモニター。
画面に映し出されたのは今回の親玉であろう奉行の姿。
勝ち誇ったような笑みと口調でありがちと言えばそうであろう、台詞を連ねるがその途中、罠というフレーズを使おうとした瞬間モニターは破壊されてしまった。
銀時と桂へその事実を突きつけようとしたがどうあっても認めようとしない。
諦める事を知らないのか、用意周到と言えばいいのか向かい側から現れたもう一つのモニターに、またも奉行が今度は怒りながら映し出された。
だが先ほどとは違い、台詞をせめて最後まで聞けということだったがそれも途中で二人がモニターを壊す事で強制終了を余儀なくされる。


「是が非でも認めないつもりだよ」

「なんて負けず嫌いな人達なの」

「認めちゃえば楽なのに・・・」


呆れる達だったが、銀時達はともかくとして今の状況は罠である事は確実である。
慎重に進もうと言うさっちゃんだったが、その言葉も聞かず神楽は次の部屋に続く扉を警戒もなく開けてしまう。
勢いよく向かってくる丸太に驚く新八と神楽だったが、銀時と桂は二人でその丸太を破壊してしまった。



「銀時・・・。これしきのものは断じて罠とは言わんな」

「あたりめーだ。俺たちは罠にかかる程アホじゃねーぞ。これはアレだ・・・」



「「いたずらだァァ!!」」



叫びながら走り出した二人だが、その行く手を遮るようにして現れる『いたずら』の数々。
降り注ぐ矢に爆発。飛んでくる手裏剣に鉄球。
全てを避け、薙ぎ払いながらもいかに自分たちの行動が正当で、けして敵の思惑や策略に引っかかったのでは無いという事を強く主張しつづける。
ある意味潔いぐらいの主張と行動に、四人は無言のまま拍手を送った。
一通り片付いたと思い油断した所で、最後の『いたずら』が発動する。
天井の一部が勢いよく落ちてきたが、それすらもひっかかりつつもさもワザとひっかかったと主張するかのごとく、二人はけして自分達の考えを曲げない。


「・・・・・・・・・」

「ホント、かわいい人達ね」

「ここまでくると賞賛ものですよ」




その後も敵の仕掛けた『いたずら』を掻い潜り、たどり着いたのはやたらと開けた場所。
まるで自分達をおびき寄せるために用意されたような部屋に、エリザベスが柱に括りつけられていた。
駆け寄る桂だったが、さっちゃんの制止も間に合わず突然エリザベスの体から無数のクナイが飛び出す。
はとっさに避けようとしたが体が動く前に背中を押されて床に倒れ臥す。
ボロボロになったエリザベスだったものは偽者で、中から現れたのは男が一人。


「エリザベスちゃんはここにはいないよ」

「なっ! お前は!」


突然現れた人物に驚くが、その正体はさっちゃんによってすぐに明かされた。
元お庭番衆ということはさっちゃんと仲間だったのだろうことが二人の会話で窺える。



「ゴニンジャーだかなんだかしらねーが、にわか忍者じゃ、本物の忍者には勝てねーよ」



柱の影から現れた、黒い布で全身を覆い隠した者が四人。
銀時達を取り囲むようにして立ちはだかった。




「俺たちが、最強の五忍だ」





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