前へ進め、お前にはその足がある
>温もり -act04-
立てこもり事件の一騒動の後、達はとあるデパートのレストランに居た。
最初はゴーグルや包帯、帽子などで顔を覆っていた神楽の父親は、今はそれら全てを取り払ってしまっている。
見てはいけないと思いつつも、自然と視線はその頭頂部へといってしまう。
なんとか視線を外すが、どうしても話を聞こうと視線を向けると自然と目より上へと移動してしまい、内心自分を叱咤していた。
の葛藤など知らず、新八は店内の事も考えずに大声をあげる。
「星海坊主ぅぅ!? 星海坊主って・・・あの・・・えっ!? 神楽ちゃんのお父さんが!?」
「新八君、ここ店内だからもうちょっとボリューム下げて」
「星海坊主? なにそれ? 妖怪? 坊主じゃねーぞ。うすらってるぞ、頭」
「銀さん!」
人が必死に耐えているというのに、なんて事を言うんだ!今までの努力が無駄にする気か!
隣から聞こえた言葉にそう目線で訴えるだったが、まったくそれを気にすることは無い銀時。
反面、星海坊主とは一体なんなのだろうと思っていたのはも同じで、丁寧に説明してくれる新八に内心感謝した。
しかし新八の親切も仇で返すと言えばいいのか。銀時は更に星海坊主の神経を逆撫でるようなことをはっきりと言ってしまう。
の心配は的中し、星海坊主は立ち上がり拳を握るが神楽が冷めた目でそれを見る。
「おちつくネ、ウスラー」
「ウスラーって・・・、アレ? でもハスラーみたいでカッコいいかも」
娘の言葉には甘いのか、とはホッと胸を撫で下ろした。
ここで一暴れでもされてはかなわない。色々と。
がそんな事を考えているとは思っていないだろう、神楽は三人を星海坊主へと紹介し出した。
「ウスラー、紹介するネ。こっちのダメな眼鏡が新八アル」
「ダメって何?」
「こっちのダメなモジャモジャが銀ちゃんアル」
「いや、だからダメって何?」
「で、こっちが見た目の可愛さをその拳でダメにしてるアル」
「意味合いは二人と違えど、結局ダメなんだね・・・」
神楽による紹介内容が否定したくともできないものだった為、渇いた笑いしか出てこなかった。
星海坊主は神楽の紹介を聞いてもさして興味など持たず、むしろ疑いの眼差しを向けてくる。
以前神楽から夜兎についての事や銀時たちと初めて会ったときの話などを聞いていたは、星海坊主の言葉を否定する事はできなかった。
だがそれも銀時はいつもの調子で返せば会話の内容はあらぬ方向へと向かっていく。
気付けば星海坊主が銀時の胸倉を掴み暴れ始めた。
「とにかく、てめーのような奴にウチの娘は任せてられねェ。神楽ちゃんは俺がつれて帰るからな!!」
「なーに勝手に決めてんだァァ!!」
「ぐはっ!!」
「銀さんっ!」
星海坊主の言葉を聞いた神楽は怒りのままに蹴り上げ、共に蹴られた銀時はそのまま向かいの席へとつっこんでしまう。
駆け寄って助け起こしながら怪我が無いか聞くが大丈夫だと確認すると、はホッと安心した。
「神楽ちゃん、家族ってのは鳥の巣のようなもんだ」
「パピーは渡り鳥、巣なんて必要ないアル」
横から聞こえてきた二人の言葉に、顔を上げた。互いに視線をぶつけ合い、言葉をぶつける。
言葉が交わされるたび、段々とその空気に変化が出始めた。
「それじゃ、なんでこの止まり木にこだわる? ここでしか得られねーモンでもあるってのか」
「またあそこに帰ったところで何が得られるネ。私は好きな木に止まって、好きに飛ぶネ」
それはまるで肌の上を走る、電気のようにピリピリとしている。
「・・・・・・ガキがナマ言ってんじゃねーぞ」
「ハゲがいつまでもガキだと思ってんじゃないネ」
例えて言うならば、それは殺気にも似たようなものだが二人の空気は更に深くなるばかり。
流石にその変化はマズイ、と感じた三人は口を開く。
「アレ・・・・・・? 何このカンジ」
「これ、ヤバイんじゃ・・・」
「オイ、ちょっ・・・」
「ほぁちゃああああ!!」
銀時の制止すら途中で遮られ、ガラスの割れる音と神楽の声が響き渡る。
外へと出てしまった二人を追い窓際から外を見れば、下の屋根へと降りてすぐにぶつかり合う。
高く跳躍をして屋根から屋根へ飛び移りどこかへと姿を消してしまう。
「これかなりヤバイよ、新八君・・・」
「そ、そうですね。止めなきゃ・・・っ!」
自分たちに止められるかどうかなどわからないが、このままではもっとまずい事になりそうだと思った二人が振り返った先にいたのは。
「ちょっとお待ちいただけますか、お客様」
接客用の笑顔を浮かべながら額に青筋を浮かべた、店長らしき人だった。
辺りを見渡せば割られたガラスが散乱し、先ほど銀時がぶつかったテーブルの上には割れた食器類。衝撃で割れたのだろう。
いつのまにか銀時の姿は無く、取り残された二人は口元を引きつらせた。
「こっちも、ヤバイね。新八君」
「ええ、かなり」
神楽達どころではなくなった二人は、そのまま店長に連れて行かれてしまった。
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