前へ進め、お前にはその足がある
>縁合い -act05-
「あれ、姉上。さんと神楽ちゃんは?」
「神楽ちゃんはきっと万事屋でしょう。ちゃんはたぶん、また銀さんを探しに行ったんだとおもうけど」
あれから神楽と定春、は新八の元に身を寄せていたが毎日のように朝早く姿を消してしまう。
行く場所など一つだろうと思い万事屋へ行けばすぐに神楽は見つかった。
しかしだけはそこに来ることは無く、毎日のように朝早くからでかけ夕方になれば帰ってくる。
バイトに出ているのかと思っていたが団子屋へ行けばは、数日休みをくれと言ってきていないと言う。
の事だから無茶をすることは無いかもしれないが、しかしそれでも心配な事に変わりは無い。一度問いただした事があった。
銀時を探しに町を歩き回っているといわれた時にはそれを止める事もできずに、ただ無茶だけはしないでくれとしか言えず。
「まったく、銀さんはどこに行ったんだ・・・」
居場所のわからない銀時。本当ならば探しに行きたい所だったが、居場所がわからないのでは探しようがない。
それならば分かっている者の元へ行く方がいいと、新八は神楽の元へ行く為に家を後にした。
人の波が絶えない街中をは歩いていた。今朝も早く新八の家を出てから今まで歩き詰めで足が痛くなってきていた。
それもここ連日、続けての事だからそろそろマメができるかもしれない。
しかしはそれを気にする事も無く、先ほどから何か紙を見せながら人に聞いて歩いている。
「あ、あの・・・すいません、こう言う人見ませんでしたか?」
「あー? ・・・さあねェ。悪いけどしらねーよ」
「そうですか・・・」
銀時の特徴を書いた紙を見せながら、聞き込みを続けていた。
しかし成果のほどは全く無く毎日のように項垂れるばかりだった。それでも立ち止まっていられ無いと、また歩き出したときである。
「ん? ではないか」
「あ・・・桂さん」
「このようなところで何をしている? 銀時はあれからどうだ?」
あのあと真選組に捕まる事も無く、また新たなバイトにつけたのだろう桂だった。
店の前で看板を持ち立っている桂の声に足を止めただったが、銀時の事を聞かれ答える事もできず表情を曇らせる。
の様子に首をかしげた桂はその手に持っていた紙は何だといわれて言い淀んだ。
それに何かを察したのか、先ほどより低い声になり聞いてくる。
「銀時に何かあったのか?」
「そ、それが・・・」
事の経緯を詳細にではないがわかりやすく、簡潔に伝えれば聞こえたのは溜息。
俯いたままのだったがその肩に手を置かれてやっと顔を上げると、真っ直ぐに向けられた視線とぶつかる。
どうやら先ほどの溜息は銀時だけではなくに向けられてもいたらしい。その視線はの足へと向けられた。
「。君は少し無茶をしすぎだ。心配なのは分かるが、その足ではかなり無理をしているだろう」
「でも、銀さんを早く見つけたいんです」
「何事も一息入れる事も大切だ。でなければ、大切な事も見失ってしまう」
「でも・・・でも・・・」
それでも銀時を見つけたいと願うだが言葉が上手く紡げずに立ち尽くす。桂からは先ほどとは違う溜息が漏れる。
隣にいたエリザベスへと何かを言うと、店先に置いてある椅子へとを座らせ奥へと入っていった。
本当ならすぐにでも探しに行きたかったが、一度休めた足は痛みを訴えてきてそれは叶わない。
暫くして奥から戻ってきた桂は、手にお茶の入った湯呑を持っていた。それをへ渡すと立てかけていた看板を持ち隣に立つ。
「まったく、銀時も幸せ者だな。しかし同時に馬鹿でもある」
「な、なにがですか?」
「君は、銀時が好きなのであろう? なのにあやつはそれに気付いていないようだしな」
それを馬鹿と呼ばずしてどうすると言われたが、それに答える事はできなかった。
朔といい神楽といい桂といい、どうしてこうも周りには人の気持ちを察するのに長けている者ばかりなのだろうと驚く。
恥ずかしいやらなんやらと湧き上がってきた気持ちを落ち着ける事も兼ねて、はお茶を一口飲んだ。
「銀時は捉え所のない男だ。いい加減な所もあれば時に己の信念で動く。
正直、昔からヤツを見ているが俺でもわからん事が多い」
「・・・そうですね。でも・・・」
「そんなあいつが好き、か。、友人としてはあまりお勧めできない男だがまあ、君が決める事だ」
そう言って懐から出した紙には何かが書かれていた。
そこから少し離れた所にある工場らしい場所の地図と、住所。
受け取りは桂の顔を見るが、桂は真っ直ぐ前を向いたままだった。
「仲間からの情報でな。銀時に似た男がそこにいるらしい。
ただ気をつける事だ、その工場を経営している奴からは碌な噂を聞かん」
「あ・・・ありがとうございます!」
「礼などいい。ただ・・・いや、なんでもない」
何かを言い掛けた桂だったが、それ以上何を言うでもなくは貰った紙を握り締め、足の痛みなど忘れて走り去った。
人込みのなかに消えていくの後姿を見つめて桂は微かに笑みを浮かべる。
「銀時、貴様はこれしきの事で本当に大切な事を忘れる男ではあるまい」
―― あとは己で決める事だ。
蒼くすんだ空を仰ぎ見る桂が何を思ったのかは、本人のみが知ることだった。
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