前へ進め、お前にはそのがある

>縁合い -act03-







病院を出てから達は銀時へと色々と教えながら万事屋へと戻った。
店の前に立ち看板を見上げている銀時。



「万事屋銀ちゃん。ここが僕の住まいなんですか?」

「そーです。銀さんはここでなんでも屋を営んでいたんですよ」

「なんでも屋・・・。ダメだ、何も思い出せない」

「焦らなくていいですよ、銀さん」

「まぁ、なんでも屋っつーか、ほとんどなにもやってないや。プー太郎だったアル」



新八や神楽の言葉を一つひとつ聞いていっても思い出せるものが何もない銀時だが、周りが更に追い討ちを掛けていく。
キャサリンに至っては自分のやった事を他人になすり付けてしまおうとしているが、それは新八のツッコミによって何とか阻止できた。


「どうです銀さん? なにか思い出しましたか?」

「思い出せない、っつーか思い出したくないんですけど・・・」

「しっかりしろォォ!! もっとダメになれ!! 良心なんか捨てちまえ、それが銀時だ!!」

「神楽ちゃんそれはいくら何でも銀さんがかわいそう!!」


神楽の言葉に驚き何とかフォローしようとするが、次には何かをひらめいた顔をして振り返ってくる。
その顔を見て一体何だと、少しだけ嫌な予感を抱いた。



「そうだ、のベアクローで一発銀ちゃんの記憶呼び覚ますアル!」

「え、ええ!? そ、そりゃあれ頭をホールドするけど、ちょっと今は拙くない?」

「べ、ベアクロー・・・・あれ、なんだろう。いま少し頭に痛みが・・・」

「ほら、銀ちゃんの体にもの与える痛みが染みついているヨ!」

「素直に喜べない・・・」



達の様子と銀時の状態を見てどうしたらいいのかと新八が聞けば、街を回ってくればいいと言うお登勢の言葉に頷く。
なんだかんだで銀時はいろいろな所に顔見知りなどがいるのだから、ここで立ち止まっているよりマシだろう。
ここで聞いた己の過去に軽く頭を抱え始めた銀時の腕をひいて神楽を呼び、歩き出した。






万事屋から歩き出して暫く。近くの店や知り合いのいるであろう場所を手当たり次第歩き回る。
銀時がよく行く居酒屋や、屋台がいる場所など様々な所を四人で回るが一向に銀時の記憶を刺激するようなものは現れない。
なんど聞いても「思い出せない」の言葉が返ってきてしまう。
ここらで少し一息入れた方が良いのではと思い始めた矢先である。何やら見覚えのある白い物体が視界を掠めた。
少々いかがわしい感じの看板を掲げる店の前。そこに立っていたのはエリザベス。
しかしは更にその隣の人物へと目がいき、そういえば銀時と知り合いだとか言う話を前に一度聞いたことがあると思い出した。



「・・・ねえ新八君、神楽ちゃん」

「はい? ・・・・あ」

「ヅラがいるヨ」

「ヅラじゃない、桂だ」



少し離れた場所にいるにも拘らず、いつもの返しはしっかりするあたりもう癖なのだろう。
きゃばくらの客引きのバイトとして外に立っている桂を見つけ、近寄っていく
「こんにちわ」と挨拶をする傍ら、指名手配犯が白昼堂々客引きをしているのはある意味すごいと思ったのは黙っておく。

いつもならば桂へ一言二言、余計な言葉を投げかける銀時だがそれが無い事をおかしいと思ったのかどうなのか。
真意はわからないが「どうかしたのか?」と聞いてくる桂へ事情を話せば、その表情に特に変化は見られない。
記憶が無いと言っているのに何があったか教えろと言ってくるあたり、素なのだろう。そんな桂へ「何やってるんですか」と聞く新八。



「国を救うにも何をするにも、まず金がいるということさ。 そこのお兄さーん、ちょっとよってって。かわいい娘いっぱいいるよー

「そう言えば初めて会ったときも客引きしてましたよね・・・・」



あまり思い出したくは無い事だったが、あまりに衝撃的過ぎて忘れるに忘れられない。
いっそ自分が記憶喪失にでもなってしまいたい気持ちに陥ってしまいそうになったが、は何とかそれをギリギリ耐えた。
そんな葛藤を軽くしていたの横で、桂は銀時へよっていけと言ってくるが勘弁してほしい。新八の鋭い突っ込みのとおり、これ以上何を忘れさせようと言うのか。
むしろ自分が忘れてしまいたい記憶が盛り沢山だとまでは、喉元まで出かかって何とか飲み込んだ。



。君もよっていかんか。それかいっそ働いてみるといい。君ならこの店で荒稼ぎができるかもしれんぞ」

「遠慮しておきます」



さり気無く勧誘してくる桂へ、きっぱりと断れば突然隣で新八が銀時へと蹴りを入れた。
やはり根本は銀さんなのだなとそれを見て妙な安心感を得たが、まだ本当に安心するのは先の事だ。
今は記憶をとにかく取り戻さなければならない。何か些細なきっかけでもあればいいのに、と考えている矢先。
新八の蹴りによって何かがでかかっているらしい。さり気無く桂が記憶の改ざんをしようとしているがそれは何とか阻止しておいた。
しかし何か間違っている。必死なのは分かるが店先で銀時を殴ったり叩いたり。これではただのいじめだ。



「あの、二人とも落ち着いて・・」

さん。これはきっと無理です。止められません」

「でも、打ち所悪かったら余計に銀さん忘れちゃ 
「か〜つらぁぁぁぁ!!」



激しいタイヤが地面を削る音と怒号に驚き咄嗟にがしたことと言えば。





「銀さん危ない!!」

「!?」





思い切り突き飛ばす事だけだった。

咄嗟の事で力の加減なんかできるわけもなく、転がっていった銀時は壁にぶつかり逆さまになってしまっている。
しかし車に轢かれるよりマシだと、自分に言い聞かせながらその反面、冷や汗が頬を伝った。
桂はエリザベスと逃げ出し、パトカーが爆発する前に脱出した土方と沖田はすぐに桂を追っていく。
残されたのは倒れた銀時と。そして二人を心配する新八と神楽である。



「銀さん!! さん!」

「わ、私は大丈夫・・・っ! 銀さんは!?」

「銀ちゃん!」



呼びかけに答えるように薄っすらと目を開けた銀時に安心した瞬間。





「君達は・・・誰だ?」





振り出しに戻ってしまった事実に、心の内でそっと「ごめんなさい」とは呟いた。





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