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前へ進め、お前にはその足がある
>万事屋 -act03-
夜の森の中。茂みに隠れている銀時たち。そこでname0の腹の虫が鳴いた。
「おいname0。おめー、ちっとはその腹の虫どうにかしろよ」
「何か恵んでくれたらきっと治まりますよ」
「さーて、やっこさんはまだかなー」
「銀さん。私の眼を見て下さい」
目を逸らす銀時の横顔を凝視しながら言っても、全く目をあわせようとしない。
こうなれば穴が開くほど見てやるとname0も少し意地になった。
そんなに見つめられると銀さん照れちゃう。とか言ってきたがそれも無視しておく。
二人のやり取りの横で新八は溜息をついた。同時になるのは腹の虫。
「そもそも、あの魚もとても食べられたものじゃなかったですからね。明日からどうします?」
「しょうがない奴らネ。しかたないから私の酢昆布恵んでやるヨ」
「というか私達、傍から見るとものすごい妖しいですよね」
夜中の森の中で河童のコスプレをした四人がおしくらまんじゅうだなんて、笑えない。
真選組の某副長にでも見つかればすぐにしょっ引かれるだろう。
そもそもこんな格好でここに隠れる羽目になったのは、もとはと言えばあのセンター分けの所為だ。
あれがあんな馬鹿な事さえ考えていなければこんな事にはならなかった。
夕方になり万事屋へと戻る銀時たちは先ほどの地主たちが目の前から歩いてくるのが見えた。
どうやら向こうはこちらに気付いていなかったらしく、そのまま素通りしようとしていた。
この濃いメンバーを覚えていないってどれだけだと内心思ったが、それを言ったら自分もそのメンバーに当てはまると気付き言葉を飲み込んだ。
すれ違い様に聞こえたのは地主であろう男の『池を埋め立てる』という言葉。思わず振り返ったname0だが、それ以上は銀時に肩を掴まれて叶わなかった。
「もうあんなの、センター分けじゃなくてセンターハゲでいいよ」
思い出して更に腹が立ったのか、name0は草を弄る。
遠くで重機の動く音が聞こえた。それを合図に、四人は顔を見合わせ頷く。
新八と神楽が動き、name0も銀時と共に目的へと向かって移動した。
遠くで男の断末魔が聞こえる。
「神楽ちゃん、早速殺ったみたいですね」
「あれ、俺の気のせい? 今一部の漢字が違うものに聞こえたんですけど」
「やだなー銀さん。漢字は聞き取ってわかるものじゃないですよ。気のせいじゃないですか?」
「そうだよねー。俺の気のせいだよね。name0はそんな物騒な事言う子じゃないからね」
「そうですよ。ちょっと腹が空いて苛立ってるだけなんで、殺る気なんてこれっっっっぽっちも無いですよ」
笑顔でなに恐ろしい事言ってんのこの子!!!???
思わぬname0の台詞に苦笑いのまま表情を固まらした銀時はそのまま、何も言わず移動する。
隣で微かに「右手が疼く」とか言っている時点で女子の台詞ではない。破壊神か何かの台詞だ。
考えてみれば普段真面目で良い子だからこそ、押さえ込む色々なものも多いのだろう。
一度黒いオーラを纏うととことんまで恐ろしい子だったと言う事を思い出し、再認識した銀時は目線を外した。
また遠くで断末魔が聞こえた。聞き終える前にname0は素早く目的の人物の後ろへと回り込む。
目標はこんな時ですらゴルフバックを背負う男。その無防備な背後に回りこみ、気付かれる前にその後頭部を鷲掴む。
「!?」
「四郎河童、ここに見参!」
ミシッと音が聞こえた次には男は意識を飛ばし、手を離せばそのまま崩れ落ちる。
倒れた音で振り返った地主の男は驚きの声を上げる。
「小東・・・ !!」
驚く男の背後に立つ銀時は容赦なくその首を締め付ける。
「てめーは」
「蝦夷は洞爺湖から参上つかまつった河童四兄弟が長男。 太郎河童!!」
河童姿なのにやたらとかっこいいのは反則だと思う。name0は倒した男、小東の背中を踏みつけながら銀時を見ていた。
後ろから見ても解るほどギリギリと凄まじい力がかかっている。
「この土地から今すぐ手ェ引いてもらおうか? さもなくば河童のたたりが・・・」
「かっ・・・勘弁してくれ。河童といえばなんだ? キューリか? 好きなものを言え。俺は髪の毛はあまりないが金だけはあるぞ!」
キューリでもいいよ。今はキューリのヘタ部分でもご馳走だ。
しかし自分で髪の毛があまり無い事に気付いていたとは。少しあんたを見くびっていたよ。さすがセンターハゲだ。
name0がわけのわからない賛辞を脳内で男へと向けていれば、更に鈍い音が響く。
「好きなもの。そーさな。 甘いものと、粋狂な奴かな」
ある朝。朝刊を広げ広告を仕分けしていたname0が突然一枚の広告を掴み立ち上がった。
すごい勢いでソファーに気だるげに寝転がっている銀時へと詰め寄る。
「銀さーん!! コレ!! これ見て下さい!」
「あー? んだよ、name0。騒ぐのは四人同時に告られたときかウチの貯金が底をついたときだけにしとけ」
「前半は絶対ありえない事なので騒げません。後半はいつもの事なので騒いでも意味ありません」
ニコニコと笑いながらいつもと変わらない口調で言えば銀時の顔はアリアリと呆れの色が浮かぶ。
体を起こして目の前のname0の顔を見る。
「おま・・・ちょ、ありえねーとかって。んな寂しい事言ってんなよ。もっと希望持てよ。お前黙ってりゃ可愛いんだよ」
「あははははは。黙ってれば可愛いんですか。そうですか。 喧嘩売ってますよね?」
笑顔は変わらないが、掴んでいた広告がすごい勢いで握りつぶされた。
「いやいや! ほら、で、何? なんかあったんじゃ無いの?」
「ああ、これ見て下さい」
銀時の目の前に翳された皺だらけの広告。
そこには広い土地の何枚かの写真が載っていた。その中に一枚だけ載っていたあの池の写真。
銀時は微かに笑うと立ち上がった。
「あれ? 銀さんどこ行くんですか?」
「ちっくら魚でも釣ってくらー」
「食べれるの、お願いしますね」
静かに笑いながらname0が言えば銀時は無言で手を振るだけで答え、釣竿とバケツを持って出て行った。
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