甘い物はケーキと君と







お菓子の作り方、と書かれた本を広げ作りつづけた様々なお菓子。
今では大抵のものなら頭に叩き込まれているため、本無しで作れるようになった。
は昔からお菓子が好きで、どうせなら食べたい物を食べたい時に作りたいと思い、気付けば趣味は菓子作り。
しかし前までは自分のために作っていたそれも、今では食べさせたい相手がいるからこそ、余計に力が入る。



「銀ちゃん、おいしい?」

「甘くておいしいですよー」

「それはよかった。はい、これもどーぞ」



作ったクッキーやらケーキやらと並べられたテーブルはどんどんと空になった皿が乗せられていく。
月に一度、こうしては銀時にお菓子を作りにこれでもかというほどの材料を持ってやってくる。
正直あまり糖分を摂取すると本当に糖尿になってしまいかねない為、味の割には糖分は控えめだ。
一つひとつの数もそう多くは作らない。
最初でこそ今日はクッキーだ。今度はシュークリームだと一つか二つほどしか作っていなかった。
どうせならもっといろいろ食べてもらいたい。そう思っていれば気付けば今の状態になってしまったわけだ。



「ねえ、銀ちゃん」

「んー?」

「私ね、パティシエになるのが夢なの」

「パティシエ?」

「そう、昔からの夢なの。それにパティシエになれば、もっと今より沢山の甘いものが作れるようになると思うし」



それに好きな人にはたくさん好きな物を食べてもらいたい。
流石に恥ずかしくてそればかりはいえなかったが、銀時ならきっと応援してくれるだろう。
そう思っていたは、銀時から言われた一言に一瞬目を見開いて固まった。
の様子の変化に目の前でケーキをもりもり食べる銀時は気付かない。



「・・・あの、銀ちゃん。今なんて言ったの?」

「パティシエなんてやめとけって言ったの」

「え、え? なんで!? だ、だって銀ちゃん甘いもの食べれるよ!」

「今も食べれてますぅ」



フォークをフリフリと目の前で揺らしながら頬杖をつく銀時はいっそ憎らしいぐらいに表情に変化が無い。
対しては驚きで目を見開いて銀時と目の前のフォークを見つめた。
まさかそんな事を言われるとは思っていなかったはさらに食って掛かっていく。



「何で駄目なの!? 理由言ってよ!」

「理由言わなきゃ納得しねぇの?」

「するわけ無いじゃない!」

「んー・・・」



答える事を渋りながら一口ケーキを口に放り込むとモゴモゴと噛み締める。
その間の視線は真っ直ぐに銀時を捉えていたが、銀時の視線は右へ左へと泳いでいた。
口の中に残っているケーキを飲みこんだ事を確認すると、もう一度は問い掛ける。
銀時はそんなを見ると溜息をつきながら、最後の一口をフォークで差して口に運ぼうとする。



「だってよぉ、がパティシエになったらオメーの作ったのをその他大勢の野郎も口にするって事だろ?」

「え、あ、うん。まあ、そうだろうね・・・?」

「そんなんヤじゃん。の作ったもんは、俺だけが食っていいんだよ。俺の専属パティシエで納得してろコノヤロー」

「え、えー? ねえ銀ちゃん、すっごい事言ってるけど、自覚してる?」

「知らねぇ」



言いながらそっぽを向いてしまった銀時だがから見えた頬が赤いことには気付いていた。
どうやら相当恥ずかしかったらしい。
しかしこの先一体何度、こんな事を言ってくれるかわからない。
忘れろと言われても忘れる気などなく、とりあえず貰った甘い言葉は心に確りと刻んでおこうと思っただった。





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