繰り返される日常







朝八時過ぎ、いつもと同じように新八が出勤してきて最初の仕事は他の者を起こす事から始まる。
少し前までは銀時と神楽だけだったがここ最近、もう一人朝寝坊が増えてしまった。
神楽を起こした新八はそのままの流れで和室へと行くと、遠慮もなしに襖を開ける。
二つの布団が並び、とっくに朝日は昇りきっていると言うのに今だスヤスヤと眠る銀時とに、呆れのため息が漏れた。



「二人共もう朝ですよ。いい加減起きてください」

「・・・ぅー・・・あと、半日・・・」

「それ起きる気無ェだろ。もう、いい加減にしてくだ、
さい!

「ギャフン!!!」



の敷布団の端を掴みそれをテーブルクロス抜きの要領で手前に引き抜けば、ドスンと言う音と共には軽くお尻を打った。
敷布団を剥がされてはもう起きるしかないと、渋々体を起こせば隣で銀時も同じ事をされていた。
いつの間にこんな荒業を身につけたのか。それは自堕落な大人二人に対抗するための当然の進化だった。
さっさと顔を洗ってこいと言われて洗面所へ行けばちょうど神楽とすれ違う。
二人が顔を洗い終わればそのあとは朝食。台所の方から味噌汁の香りが漂ってくれば、自然と腹の虫は鳴きはじめる。
今日の当番は新八で、いつものように少し味の薄い味噌汁に浅漬けなど、それなりな朝食だった。
もちろん文句は無い。むしろ文句があるのは新八のほうだろう。毎朝毎朝、出勤して来れば三人はいまだ夢の中だ。
半ば諦めがちではあるが、それでも小言の一つ二つは漏れてしまう。

漸く朝食も終わり着替え終わったあと、神楽は酢昆布が切れたついでに朝の散歩だと定春と出かけてしまった。
新八はいつものように三角巾に割烹着姿のまま掃除をしたり片付けたりしているが、銀時とはソファで寝転がってまるで手伝おうとしない。
何度となく新八から手伝えと言われても屁理屈だけが返ってくるばかり。
いい加減にしろと怒る新八は手を休めることなく新聞紙を纏めようとした時、目の前にあったチラシに目がいくと、素早く赤ペンを取り出し
チラシに描かれているものに赤丸をつけていった。
それが終れば財布とそのチラシを銀時たちへ叩きつけ、玄関の外へと追いやってしまう。



「おい新八、なんだコノヤロー。こんな仕打ちして、タダですむと思ってんのか?」

「働きもしないアンタにそんな事言われても微塵も恐くありませんね。いいから二人でそれ、買ってきてください」

「大江戸ストアの安売りのチラシ? あ、丸がついてる」

「そういうことです。じゃあいってらっしゃい」



無情にも扉は閉められてしまった。掃除の邪魔になるくらいなら買物に出した方が良いと判断したのだろう。
最近の新八はだんだんと容赦なくなってきている気がするのは、きっと気のせいでは無い。
だが追い出された二人はそんな事に焦りも何も抱かずのんびりと歩き、途中でコンビニに寄り道などもしていくしまつ。
タイムセールの時間からはズレていたおかげもあって、店内でもスムーズに買物を済ませる事が出来た二人は
今は公園のベンチに座ってアイスを食べている。買物をした自分自身へのご褒美らしい。
即決だった銀時とは違い、は悩みに悩みつづけ結局はチョコ味にしたのだが、食べ始めれば他人のも気になるというもので
先ほどからの視線は銀時の手元に釘付けだった。



「あー、やっぱりいちご味にすれば良かったかな」

「んだよ、散々悩んでチョコにしたんだろーが・・・ったく、一口だけだぞ?」

「わーい!」

「ほれほれ、のも一口寄越しやがれ。タダで俺のいちごアイスが食えると思ったら大間違いだぞ?」

「んー、いちごも美味しい! って、銀ちゃん一口多いよ!?」

のお口がちっさいのがいけないんですゥ」



ガブリと多めに食べられてしまったアイスを見ながら抗議するが、銀時はどこ吹く風である。
モゴモゴと口を動かしつつチョコも甘くて美味しい、などと味の感想を述べた。
食べられてしまった物は仕方がないと、もそれ以上文句を言う事もなく再び自分のアイスを口にし始めると、心底幸せそうな顔を浮かべた。
公園でのんびり過ごし始めて既に二時間近く経つ。そろそろ帰らなければ、新八が怒るだろう。



「アイツの事だからよォ、買物一つで何時間掛かってんですか。どうせどこかで道草でも食ってきたんでしょ! って言うんだぜ?」

「あははは、似てる似てる!」



口調どころか仕草まで新八に似せて言う銀時だったが、家に帰って早々に新八に言われた台詞はほぼ同じものだった。
おかげでは帰ってきてからも大爆笑で手がつけられない状態になっている。
最初でこそ突然笑い出したことに何がなんだかわからない新八が銀時へ理由を聞けば、深い溜息を吐き出した。
その間もは土間にうずくまり床を叩きながら虫の息だ。



「ヒィ、ヒィ、・・・ゲホッ、ちょ、くるし・・・っ!」

「・・・人の事でそこまで笑えるさんは幸せそうですね。と言うか何くだらない事してんですかアンタは」

「オメーが読める行動をとらなきゃいいんだよ。ようはオメー自身の責任ってやつだ。見ろ、が酸欠状態に陥ってるじゃネェか」

「わけのわからない責任転嫁すんな!」



銀時たちが買ってきた物を袋から取り出しながらツッコミを入れる新八だが、銀時はさして気にしていない様子だった。
はいまだに笑いが収まらず咳き込んでいる。
そんな二人の様子を見ながら、本日何度目かもわからない呆れを交えた溜息をつきながら、無駄遣いはしなかっただろうなと問いかければ
一瞬だけ空気が張り詰めたような気がした。だがその空気の変化を探る間もなく、銀時から「してない」の一言が返ってきた。
ならば良い、とその話題はそこで終ろうとしたが思わぬ伏兵が居た。それは神楽だ。
ちょうど散歩から帰ってきた神楽は、玄関の土間で定春の手の汚れをタオルで拭いてやりながら、二人が公園でアイスを食べていた事を告げてしまう。



「ちょ! 馬鹿、神楽! 何でバラすんだよ!」

「やっぱりそうネ。後ろめたい事がある奴ほどこんな幼稚な手に引っかかりやすいアル」

「あ・・・・」

「・・・・・・・・・・銀さん、さん」

「あ、ちょ、あの、・・・私ちょっと買い忘れあったから行って・・・グェッ!!!」



逃げようとしただったが銀時の伸ばされた手は確りと襟首を掴み動きを制してしまった。
どす黒いオーラをまとう新八に竦みあがりながらも、逃げ出そうと必死のだが銀時は逃してたまるかとやはり必死だった。



「ぎ、銀ちゃん、離して! 私の事は構わず、銀ちゃん一人で頑張って!」

「旅は道連れ、世は情けって言うだろうーが。自分一人逃げようとしてんじゃねェっ!」

「情け容赦無い台詞にしか聞こえないんですけどォォォ!!」



結局逃げる事は適わず、静かに名を再び呼べば二人は青くなり固まってしまった。浮かべた笑みすら恐ろしい。
その姿を姉のお妙と重ね見てしまった二人はただ竦みあがり、冷たい台所の床の上に正座をさせられ小一時間
みっちりと万事屋の家計状況と二人の財布の紐の緩さや金銭感覚などなど、今までに溜まりたまった事も含め説教三昧な一日となってしまった。







「・・・これからは、気をつけようね・・・バレないように」

「・・・ああ、そうだな・・・次はもっとバレねぇようにしねぇと」



怒られても懲りない二人が、また同じ事を繰り返して説教されたのはまた別の話。





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「Clear Wind」の和栗あやか様への相互記念夢です!!
リクは銀さんで家族的ほのぼの・・・だったんですが・・・こ、これ家族的ほのぼのか?
むしろギャグが目立ちすぎている気がするのはきっと気のせいじゃない・・・・・。
こ、こんなもんで本当に申し訳ないです!!
ステキなリクを頂いたというのに、何ひとつ活かせていない自分の力量の無さに絶望しそうです・・・orz
こんな物ですがどうぞお納めくださいませ!もちろん返品は可能ですので!
相互リンク誠にありがとうございましたー!!


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