神楽と新八とが買い物に行っている間、俺は今にも雨が降り出しそうな曇天の空をジャンプ越しに眺めていた。

そろそろ帰ってくるだろーなと思ったとき、表の階段を上る2つの足音と、玄関が開く音が聞こえた。

 

 

「ただいまヨー!!」

「うるせーよ神楽。そんなに叫ばなくても聞こえてるっつーの」

きーん、と耳に響く甲高い声にジャンプを置いてツッコミをいれる。

 

 

「あれ、銀さん1人ですか?」

机に買い物袋を置いて新八がそう問いかけた。

「当たり前だろーが。こんな天気の日に客なんざ来ねーよ」

「や、そうじゃなくて、さん帰ってませんか?」

 

そういえば、いつもなら神楽と一緒にただいまタックルをかましてくるがいない。

 

 

「途中ではぐれちゃったアル!!先に帰ってると思ってたのに…!」

「んなもん、そのうち帰ってくるだろ」

「迷子になってたらどーするアル!!雨も降りそうだし、心配ネ!」

「だったらおめーが探しに行けばいいだろーが」

なんで俺が。そんな雰囲気を出しながら神楽に言う。

 

 

「あ」

食品を冷蔵庫にしまっていた新八が呟いた。

 

「銀さん、チョコ買い忘れました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とぼとぼ、という効果音が似合いそうなほどゆっくりと道を歩く。

心なしかどんどん大通りから離れてきている気がする。

 

「うう、神楽ちゃん、新八くん、どこー!!?」

 

 

どこー、と建物の間に響く私の声。

…冗談じゃない。なんでこんな曇りの日に迷子にならなきゃならないんだ。

 

人混みに流されてしまった私が悪いんだろうけど…なんで、こんな薄暗いトコに出ちゃうわけ!?

 

 

かぶき町の賑やかさとは正反対と言えるほど静まった細い道をとぼとぼ歩く。

「と…とりあえず、大通りに出なきゃ」

どうか雨よ、降らないで。

そう心の中で唱えてから、私は歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく歩いていると、ぽつりと腕に何かが当たったような気がした。

「雨…?…いや、気のせいかな」

でも、さっきより雨の香りが強くなってる。

 

 

「ど…どうしよう。ちょ、誰かァァーー!!大通りってどこォォオーー!?

道の真ん中で立ち止まって空を見上げながら叫ぶ。

このまま帰れなくなっちゃったら、なんて思っていると遠くから声が聞こえた。

 

 

「……!ー!」

そう私の名前を呼ぶ声は、毎日聞いてる人の声。

 

 

「銀…ちゃん…!銀ちゃーーん!!」

声のする方へ走っていくと、見慣れた銀髪の人影が見えた。

さっきまでの重い足取りはなんだったんだろう、っていうほどに勢いよく、私は銀さんに飛びついた。

 

 

 

「よよよよかった、会えてよかったー!」

「はいはい。泣きそうな顔してんじゃねーよ」

べち、とデコピンが私にヒットする。

地味に痛いよ、銀ちゃん。

 

 

 

おでこをさすりながら、ふと思う。

今日って銀ちゃんは家で留守番してたよね?

 

「銀ちゃん…もしかして、私のこと探しに来てくれたの?」

「違いますぅー。コンビニ行った帰りに聞き覚えのある叫び声が聞こえたからちょっと見に来ただけですぅー」

言いながらこれみよがしにコンビニの袋を掲げる。

 

 

「こんなとこにコンビニないけど」

「ついでに散歩してたんだよ」

「こんな裏道を?」

「静かなとこを散歩したい気分だったんだ」

「雨降りそうなのに?」

「……あーもう!うるせーな、雨降りそうって分かってんならさっさと帰るぞ!」

 

 

ぐい、と私の手をひったくるように掴んで歩き出す。

それでも歩幅は私に合わせてくれているみたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「銀ちゃん」

「んだよ」

 

前を向いたままの銀ちゃんの手を、ぎゅっと握って言う。

 

「ありがとうね」

「…別に、探しにきたわけじゃねーから。お礼とかいらねーから」

 

 

 

なんて銀ちゃんは言うけど、きっと嘘だよね。今日はちょっとだけ自惚れちゃうよ。

あれから結構歩いてきたけど、コンビニなんて見当たらないもの。

…ほんと、素直じゃないなぁ。

 

 

だから、私も意地をはってやろうじゃないか。

「ありがとう」は言っても、「嬉しかった」は言ってあげない。

 

 

 

「なーにニヤニヤしてるんですかーちゃん」

「ううん、なんでもなーい」

無意識に緩んでしまっていた頬を軽く叩く。

 

 

「そろそろ本格的に降ってきそうだから、さっさと帰るぞ」

そう言って銀ちゃんは、掴んでいた私の手を離して、今度は私の指を絡めるようにして手を繋ぐ。

世間で言う、恋人つなぎというやつ。

 

 

 

「…雨降ったら、銀さんの髪が大変なことになんの!だから走るぞ!転ぶなよ!」

「あ、う、うん!」

呆気に取られていた私の手が引っ張られる。

 

 

顔に熱が集まってくるのを感じながら私は銀ちゃんの後ろを走る。

下を向いていた顔を少しだけ上げると、少しだけ赤くなった銀ちゃんの耳が見えて。

 

また頬が緩んでしまいそうになるのを堪えながら、軽やかな足取りで万事屋を目指す。

 

 

 

 

万事屋までもう少し。雨が降るまでもう少し。

私とあなたが素直になるまでは、まだまだかかりそう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不安だったのは





(不安だったのは、私。でも、銀ちゃんが来てくれて、不安なんて吹っ飛んだよ。…なんて言ってあげないけど!)

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

いつもお世話になっている唯斗さんへ捧ぐ小説でございます!
『迷子ヒロインを探しに来たけど、絶対に素直にそれを認めない銀さん』という素敵リクエストでした。
気付いたら、このツンツンデレ共め!と叫びたくなるお話になっていました。
素敵リクエストに風村クオリティが加わってギャグがメインの小説となりました。
そんなギャグ夢小説もといツンデレ銀さんを唯斗さんへ捧げます。これからもよろしくお願いしますです!

2008/09/23




---




風村雪様より、大変悶えに悶える素敵夢小説を頂いちゃいました・・・!
お持ち帰りの際、タイトルバー部分のあまりの悶え台詞にその部分もしっかりお持ち帰りしちゃいました☆
己の欲望に正直に生きて本当によかった・・・本当によかった!!
もうね、萌えすぎてバッタンバッタン暴れまわったからね!落ち着くなんて単語、知らないよ(にっこり)
こんな素敵な悶え小説を頂いて大人しく見ていられませんって奥さん!(誰)
理想の銀さんが今ここに、いらっしゃる!!
本当にありがとうございましたー!!!
これからもどうぞ仲良くしてやって下さいませ〜vvv



BACK